出会いと別れの季節
リンダさんは、私達ホテル清掃現場の責任者であった。
この二月末で、お別れすることになった。
理由は、清掃会社が、ホテル側から契約解除されたからである。
ホテルと私達清掃員との間に、清掃会社と清掃コンサル会社が、あって、両者に、かなりの契約料を、毎月支払っていたようだ。
ホテル側は、そういう支出を整理したわけだ。
私達も、解雇という危機にさらされた。
リンダさんは清掃会社の秘蔵っ子だったので、清掃会社が手放さず…そのまま別の現場に行くことになった。
私達はというと、リンダさんが掛け合ってくれたことと、ホテル側の願いがうまくマッチして、ホテルからの直接雇用となった。
一月の半ばにその事実が判明し、二月一杯で、お別れとなることになったから、結構慌ただしいことであった。
彼女は、色々なメモを残してくれたし、清掃会社の有給消化や、ホテル側の採用にあたってのあれこれの書類提出など、最後までよく私達の面倒を見てくれた。
さらに、系列ホテルに出向き、清掃指導するなど、ホテル側にも、惜しみなくknow-howを、残していった。
一緒に残って欲しいと言っても、清掃会社は、彼女をなかなか手離さなかった。
多分、単にパートの責任者扱いではなく、契約社員として他の現場に、雇用されることになったのだろう。
彼女は、経験豊かな優秀な、清掃員だったから。
あまり、自分の先行きのことについて詳しくは語らなかった…
何回かの離婚歴があり、障害のある子を抱え、女手一つで奮闘してきた。時々過去のことをサラリと話してくれたけれど、並大抵の人生ではなかったようだ。障害を持つ子も成人し、独立した生計を営むことになって、リンダさん自身も、少し解放されたところがあるのだろう。
心斎橋の商業ビルで、清掃の仕事するらしい。勿論、責任者として。
私自身は、リンダさんがいないという寂しさより「後に残された厄介なおばさん達」と、どういう風に折り合いをつけていくかという不安に駆られる毎日である。
リンダさんは、「厄介なおばさん達」を上手に動かしていた。
全てのトラブルは、「リンダさんに聞こう」で、解決していた。
彼女の清掃員としての優秀さと、現場管理能力の高さがあって、誰も彼女を否定できなかったからだ。
「後に残された厄介なおばさん達」にとっては、私のほうこそが、「後に残された厄介なおばさん」なのかもしれない…
(イヤイヤ、私はそんなにトラブルは起こしていない。)