その日

その日は朝のうち雨。

 動物病院に、輸液を取りに行く頃は止みそうになっていた。点滴は、夜の予定。

帰って台所で、用事をしていると、夫は 昼食を済ませてしばし、シードの様子を見ていた。もう 黄色い鼻汁は ほぼ止まらず 常に彼女の、鼻を塞いでいた。苦しげな様子に、たまらなくなったのだろう、夫は、彼女の鼻に口を寄せて鼻を吸ってやったが、一度 二度吸ったところで、解決するものではない。

そうこうしている時に、突然の痙攣。数日前に、似たような痙攣があったので、?と、思ったが、今回は違った。そのまま口が閉じず、舌が、力無く垂れてしまった…

 夫は 「その時 シードが、ワンとないた」と言ったが、私は、記憶に無い。

恐らく、彼女から、夫への 最後の挨拶だったのだろう。「もういいよ、お父さん。ありがとう。」という。


雨は、すっかりあがっていた。