時々シード
塾へ行く途中に通る商店街は、お買い得な物が、多々ある。青果も、魚類も、肉も、衣服も。薬も。お菓子も
で、いつも、キョロキョロ…
今日も、キョロキョロしていたら、お買い得品ではなくて、シードと同じような車椅子に支えられたミニチュアダックスフントを、見つけた。
思わず声を掛けた。緑寿ともなると、見知らぬ人に声を掛けるのに躊躇などない。
ヘルニアになったが、手術しても治らないと言われたという。ひょっとして、シードがお世話になった車椅子工房で 作られたのかと尋ねたら、そうです。と、返ってきた。
車椅子のおかげで、三年以上、元気に走り回ってくれた。車椅子に、出会う前は、腰に、後脚用のハーネスを付けて出かけたが、わたし達もシードも、なかなか、ハードな、散歩だった。お互いの歩調が合わない。シードは、兎に角 先へ先へ、走る。私は中腰で追って行く。腰が悪いとはいえ前脚は、逞しい。中々その早さについていけない。
動物病院で、犬用の車椅子がある事を紹介され、探してみた。
外国製の、メカニックなものは、サイズアバウトでも、フィットするし、直ぐに手に入るという事であったが、7〜10万円かかるという。うーむ…
ネッとで、さらに探すと、近くで、一頭一頭のサイズに合わせて手作りして下さる工房を、見つけた。2〜3万円で、出来るという。ただ、注文が、多いので、三カ月待ちになります、と言われたが、そこはもう躊躇しなかった。我が腰の未来が、見えなくなりそうだったからである。
12月末に予約して 、出来上がって来たのが、3月3日。
装着して暫くは何がおきているのかわからなかったのだろう。きょとんとして動かない。そろそろと、前足を踏み出すと、"ん?"
自分の意志で歩いていることに、気がついたのか、タタタ…と、走り出した。速かった。急いでリードを、持って後を追いかけた。
それから三年、たっぷりお世話になった。
記憶は、薄れて行く。消えてしまわぬうちに書き残しておきたい。
ミニチュアダックスフンドの車椅子を見つけて、少し忘れつつあった事柄を、手繰り寄せてみた。