七夕さん。

父が、亡くなって、はや、29年。

その初盆にかえったときのこと。

旧暦の盆なので、8月15日。七夕さんが、8月7日。

母が、大きな笹を、買っていた。

飾り付けをすると言う。

 なるべく派手に飾ってくれ、というので、あれやらこれやら、作り方を思い出しながら、飾りを作り、短冊も、お願いごと盛りだくさん。

一歳になったばかりの孫と、五歳の孫への、心配りか…と思いきや、そうではなくて、亡くなった父が、お盆に帰ってくるから、その目印にするんだとか。

「父ちゃんここや〜〜」「間違わずに帰っておいで」「初めてやから帰る道わからんからな…

で、無事に初盆を迎えられるという。



その地区では、初盆を迎える人の、お供えを、七夕さんまでに、済ます。母が、老体に鞭打って、その年 何軒かの、家々を回っていた。

それがすんだら、家で、初盆を迎える支度。

提灯を飾り、皆さんが贈ってくださったお供えを飾り、13日には、迎え火。

その頃は、まだ 裏山に、お墓があったから、そこへ上がって火をたいた。

 毎日どんなお供えをするかは、決まっていたようで、こまごまとしたことを、母は、よく勤めていた。

送り火をしたら、仏さんは、秋の彼岸を目ざして旅立つ。日によってお供えは、変わるけど、ラストの日   15日   には、旅支度をしてあげる。

杖、笠、兵糧、を  お団子で それらしく形作る。

   


兄の初盆は、どうするのかしら。

お義姉さんは、うちの宗旨も、ご存知なかったけど、月並みな初盆のしつらえくらいはしてくださるであろう。


まあ、いいや。余計なこと言うて、小姑ぶるのもな…


でも、シードの、初盆はしてやろう。

七夕さんのお飾りで、シードの、おかえりを促そうか。

 もう3ヶ月経つけど、なかなか、寂しさは、癒えない。いまだに、ふと、胸が熱くなり、目頭があつくなる。

 

彼女との、最後の日々が、家族総出の介護の日々だったからだろう。

たかが犬、と思われるかも知れないけれど なかなか私達を、人間として鍛えてくれた。




笹、買いに行こう。折り紙と。